「競争がそれだけすごいんですよ。初日からチェックしましたけど、ブルペンに助っ人のバンデンハークまで入って、全員キャッチャーを座らせて投げていましたから」と吉田スコアラー。紅白戦での戦力のチェックはもちろん必須だが、メーン球場横のサブ球場では、さらに気になる試合が行われていた。

 紅白戦と同時進行で2、3軍の合同チームと社会人のセガサミーが、9イニング制の練習試合を行っていて、ここに20代前半の若手や育成選手が軒並み出場していた。“同時に2試合”を伝え聞いたオリックス・福良淳一監督は「ウチだったら『故障者が出たら試合がどうなるんや……』とか考えないとあかんところなんだけど」と苦笑い。吉田スコアラーも紅白戦の6イニングを見届けると、大慌てでサブ球場に移動し「まだチェックできていない選手がいるんですよ」。

 ソフトバンクはここ10年で5度のリーグ優勝と4度の日本一に輝き、今季も連覇を目指す。勝利を追い求めながら、かつ、激しい競争原理の中での育成。二兎を追いながら、二兎とも手に入れてしまう。巨大戦力の牙城を切り崩すのは、並大抵ではなさそうだ。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。