現役が少なくなった70回大会出場組だが、10年後に出場した80回大会組はまだまだこれからという選手が少なくない。エースとして沖縄尚学を優勝に導いた東浜巨(ソフトバンク)はプロ入り後3年間は苦しんだが、一昨年からローテーションに定着。昨年は最多勝に輝くなど常勝軍団の中心選手に成長した。その東浜とバッテリーを組んだ嶺井博希(DeNA)も安定した守備が評価されて2年目から一軍に定着。今年も戸柱恭孝と正捕手の座を争う活躍が期待されている。

 投手で東浜より早く主力に定着したのが小川泰弘(ヤクルト)だ。21世紀枠で出場した成章のエースとして活躍したことから創価大に進学し、プロ入り後は一年目から最多勝に輝いている。故障の状態が心配だが、今年も投手陣の中心であることは間違いないだろう。野手での代表格は筒香嘉智(DeNA)と今宮健太(ソフトバンク)になるだろう。当時はともに2年生ながら筒香は3番、今宮は1番・投手として出場している。ともに初戦で敗れており、大会では大きなインパクトを残すことはできなかったが、その後は見事な成長を見せ筒香はその年の夏、今宮は翌年の夏に甲子園を沸かせることとなった。

 同じく2年生ながら主戦として活躍していたのが岡田俊哉(中日)だ。ベスト8で敗退したものの3試合全てに先発し、好投を見せている。昨年は故障に苦しんだだけに今年は復活を期待したい。大会前に評判が高かったのが慶応のエースだった白村明弘(日本ハム)だ。前年の明治神宮大会でも優勝しており、選抜でも期待がかかったが制球を乱して初戦で散った。プロ入り後はリリーフとして活躍しているが、過去2年間は不本意な結果に終わっただけに、今年が正念場のシーズンとなるだろう。ベスト4に進出した東洋大姫路で外野手としてプレーしていたのが松葉貴大(オリックス)だ。当時は故障で投げられなかったが、大学で投手に戻り才能が開花し4年後にドラフト1位でプロ入り。昨年は負けが大きく先行したものの、貴重なサウスポーとして重宝されている。

 こうして振り返ってみると、記念大会で出場校が増えたことも影響してかその後に活躍を見せている選手はやはり少なくない。また当時は目立たなくても、小川や松葉のように大学で才能が花開いた例や、田中賢介、筒香、今宮など下級生にも逸材がいたことがよく分かるだろう。今年も記念大会から大きく羽ばたく選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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