メジャーリーグ(MLB)をはじめ、米国のスポーツ界は近年、年俸高騰が著しく、毎年オフになるとスター選手が大型契約を結んだことが日本でも報道されることが少なくない。しかし、一般人には考えられない大金を手にしている選手が多くいる一方で、そのお金を散財し、破産する選手があとを絶たないことが問題となっている。
昨年6月には、米メディアのMSNが「自己破産した元スポーツスター」という特集を配信したことがあった。米プロフットボール(NFL)のビンス・ヤング、テレル・オーウェンス、MLBのジャック・クラーク、米プロバスケットボール(NBA)のデリック・コールマン、ボクシングのマイク・タイソンといったビッグネームが数多く含まれていたことに驚いた人もいるかもしれない。
2012年には、ESPNが引退後に自己破産するプロアスリートのドキュメンタリーを放送して話題になったことがあった。番組のタイトルは「破産(Broke)」。そんなフィルムができてしまうこと自体が、米国のスポーツ選手たちが身を滅ぼすケースがいかに多いかを物語っていると言えよう。
2009年にスポーツ・イラストレイテッド誌が伝えたところによると、NBAプレイヤーの60%が引退から5年以内に自己破産するという。また、NFL選手の78%は引退後2年を持たずに破産するか、経済的に困窮する。
統計によると、NFLプレイヤーは平均3.5年のキャリアを過ごし、年俸約190万ドル(約2億円)、生涯報酬は665万ドル(約7億円)。NBA選手は平均4.8年のキャリアで1年約550万ドル(約6億円)を稼ぎ、生涯報酬は約2640万ドル(約29億円)強に及ぶ。一般人には想像もつかない巨額を稼ぎながら、多くのアスリートたちはなぜ破産の末路を辿るのか。
一般的な散財の原因はやはり浪費、離婚、投資の失敗など。中でも特筆されるのは、“アメリカンドリーム”を叶えた選手たちの遣いっぷりの激しさである。
「ヨット、マンションに加え、何台かの車を買った。それだけで700万ドル(約7億7000万円)は使ったな。つまり、俺は稼いだ金をすべて吐き出したんだ。また、家族や友人たちも平気で金をせがんでくる」キース・マッキャンツ(NFLプレイヤー)
「ジュエリーだけで100万ドル(約1億1000万円)は使ったと思う」アンドレ・リソン(NFLプレイヤー)
前述の「破産(Broke)」というドキュメンタリーの中では、元選手たちが多くの赤裸々な証言を残している。これらのコメントにある通り、プロスポーツ選手としてのキャリアの短さを自覚せず、まるで“宵越しの金は持たない”とでも言うように派手な散財を続ける選手は今も昔も珍しくない。