9月14日のロッテ戦(札幌ドーム)、1回2死無走者、角中勝也が左中間に長打性の大飛球を打ち上げた。センター・西川が必死に追いかけ、見事ランニングキャッチに成功。超美技でスリーアウトチェンジと思われた。

 ところが、勢い余って足がもつれた西川は、バレーボールの回転レシーブのように体を一回転させた直後、せっかく捕球したボールがグラブの先からポロリ。ボールは誰もいないレフト方向へと転がっていった。

 打者走者の角中は、捕球されたと思い込み、二塁付近でスピードを落としていたが、ボールがこぼれたのを見ると再加速。中継のボールが返ってくるよりわずかに早く右足から本塁に滑り込んだ。

「捕球した後に落球したからアウトでは?」と疑問を抱いたファンもいたことだろう。だが、残念ながら、公認野球規則5.09に「ボールに触れると同時、あるいはその直後に他のプレーヤーや壁と衝突したり倒れたりした結果、落球した場合は捕球ではない」と定められており、完全捕球とは認められないのだ。そして、エラーでもなかったため、角中にとって「高校時代以来」のランニング本塁打が記録された。

 超美技が一転珍プレーに早変わりしてしまったのは残念だが、西川にはこれからも失敗を恐れず、持ち味の積極果敢なプレーを見せてもらいたい。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

著者プロフィールを見る
久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

久保田龍雄の記事一覧はこちら