でも、それに反して肝心の子どもにまったくやる気がないのです。小学生にして、勉強を含め全てに対してのモチベーションがかなり低い。そして、やる気のなさを具現化したように、これだけ勉強の態勢を整えても実力テストでとんでもなく低い点数をとってきました。

 子どもに対して、親があまりにもあからさまに「勉強頑張って」という態度をとってしまうと、もし勉強で悪い点をとったときに「期待を裏切った自分は親から愛されなくなってしまう」と不安になってしまいます。もし頑張っても点数が伸びなければ、「親にとって自分は価値のない人間だ」と感じ、無気力になります。まさに、彼はその段階にいたのだと思います。親による過度な勉強推奨は、子どものやる気を奪い取るだけです。

 親に求められるのは、もし勉強ができなくても、「どこを間違えたの? 一緒に考えてみようか?」といった、悪い点数だろうが自分は見放さないという態度です。勉強ができないイコール失敗、ではないのです。勉強のやる気をなくすイコール失敗、なのです。やる気さえあれば、もし最初は点数が低くても、今後どんどん挑戦していくことができるのですから。継続して挑戦する力があれば、努力の蓄積により大きな結果を作り出せるのです。

 また、家で勉強しなさいと強制する「宿題」に関しては、デューク大学のクーパー氏によって、「意味ないどころか悪影響」というとんでもない研究結果が出されました。長年調査しても、宿題をやって勉強能力が向上した、頭がよくなったという科学的な証拠がまったく証明されないのです。特に小学校、中学校で、宿題を強要しようとすればするほど、顕著に勉強のモチベーションが下がるという……、まさに心理的リアクタンス。

 クーパー氏によると、宿題は「高校生になってからやっと、少し効果が出てくる程度」なのだそうです。ただ高校時代は大学受験があるので、単に宿題と受験勉強の範囲が重なって効果が出てきた、くらいではないかと思います。

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