日本のCBは長らく吉田と森重真人がコンビを組んできた。ところがJ1リーグでの負傷により森重は長期離脱を強いられる。代わりに吉田のパートナーとして指名されたのは昌子源だった。昌子は4試合連続してスタメンでフル出場し、W杯の出場を決めたオーストラリア戦でも勝利に貢献した。

 しかしJ1リーグでのパフォーマンスがハリルホジッチ監督には不満だったのかもしれない。ACLを勝ち上がった槙野を評価してナンバー2の座を与えた。ニュージーランド戦とハイチ戦の槙野は物足りなかったものの、ブラジル戦ではクリーンな守備と持ち前の闘争心でチームを鼓舞するなど、これまでとは違う一面を見せた。

 槙野自身も「SBをやる機会もありましたけど、今年に限って真ん中でやる機会も増えていますので、そういう意味ではスタッフ陣から、いいフィードバックをもらって、僕にできること、僕に求められていることを一から整理して自分の中で、試合に入るようにしています」と変化を語る。

 ベルギー戦に話を戻すと、槙野が体を張ったシーンは4回しかなかった。まず前半5分、右サイドを破られカウンターの危機に、スライディングで突破を阻止。38分にはゴール中央でルカクのワンツーをブロック。そして後半13分にはトルガン・アザールが抜け出そうとするところをファウルでストップし、21分にはルカクのシュートを体で弾いた。

 こうした体を張ったプレーもさることながら、見逃せないのがボールのないところでのプレーである。ブラジル戦の翌日のことだった。槙野は「ディフェンスリーダーとして麻也が今まで引っ張って来ている中で、頼りっぱなしという部分もあったけど、自分もやはり入ったからには全体をオーガナイズする、鼓舞する、ラインの上げ下げなど、自分にできることはしっかりやろうと考えてやってました」と振り返った。

 その姿勢は強風と豪雨の中での練習となった12日も変わらず、練習を中断するかどうか逡巡する指揮官に練習の続行を大声で訴えていた。

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