タレントのタモリさんが「髪切った?」と聞くのは話すことがないから――。2013年に発売された『タモリ論』(新潮社)でそう分析された「髪切った?」という言葉。実はこの言葉には「いい空気をつくる」力があるのだと、人気ラジオDJの秀島史香さんはいいます。秀島さんの自著『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』でも明かしている、この魔法の言葉の使い方をご紹介します。
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小学6年生のとき、「魔法の言葉」を覚えました。当時、父の仕事の都合でアメリカ・ニュージャージー州に引っ越し、2歳違いの弟と一緒に地元の公立学校に入学。覚悟はしていましたが、早速、言語の壁が立ちはだかりました。サッカーボールひとつであっという間に友だちをつくった弟と違って、私はクラスになかなか溶け込むことができません。
日本の小学6年生は、現地では中学1年生に当たります。まさに思春期1年生。同級生たちはクラスでいかにクールなポジションを確立するかに必死。大人びて見えた彼女たちの会話に無邪気に入っていくのは難しく、かといって「私は私よ」と孤高を装うにはまだ幼い年ごろ。過剰な自意識にしばられて、また今日も一言も話せないのかと、日々、胃が痛い12歳……。
それでも1カ月が過ぎたころ、クラスメートの何気ない会話が耳に入ってきました。
「I like your hair!」
アイ、ライク、ユア、ヘア? ライクは好き、ヘアは髪。そういえばあの子は先週と髪形が違う。そうか、「あなたの髪形素敵ね!」って言っているんだ! それから意識していると、アメリカの女の子たちはとても褒め上手なことに気づきました。