●関東にも多くの縁切りスポットが

<東慶寺(鎌倉市山ノ内)>
 江戸時代、夫と離縁したかった妻が駆け込んだ寺として名高かったお寺。このため、今でも縁切り寺として知られている。明治時代になるまで独立した男子禁制の尼寺だった。似たような経緯を持つ縁切り寺として、群馬県に満徳寺がある。

<豊川稲荷東京別院 叶稲荷尊天(港区元赤坂)>
「豊川稲荷東京別院」の諸堂のひとつ。因縁除けのお稲荷さまとして、地相・家相・方位・厄なども含めた悪縁を切ってくれると言われている。ちなみに、伏見稲荷も縁切りのご利益があると伝わっていて、一部のお稲荷さまには縁切りパワーが備わっているらしい。

<四谷のお岩さま(新宿区四谷)>
 夏になると放送・上映・上演される演目として「四谷怪談」がある。夫に裏切られ無残に殺された妻が、幽霊になって夫に復讐するという話である。この話が実話かどうかはさておき、妻・お岩さまを祀るお社が四谷に2つ(正確には都内には4つ)ある。ひとつは「陽運寺 於岩稲荷」で、もうひとつは「於岩稲荷田宮神社」。お岩さまに悪縁切りをお願いし、良縁を結んでもらえるスポットである。

<縁切り榎(板橋区本町)>
 板橋本町駅から400メートルほど南側にそびえ立つ「縁切り榎」は現在4代目になる。私が6年ほど前に始めて書籍などでご紹介した時は3代目だったから、あっと言う間に3代目は失われてしまったということか。というのも、言い伝えではこの榎の削り木を飲ませると、縁切り効果があると言われているため、木を削る人が続出、今では木に覆いがかけられている始末なのだ。広めてしまった私にも責任の一端はあるかもしれない。何しろ以前はなかった絵馬にもキョーレツな祈願文が並び、なんの変哲もない街中の一角が、怨念に包まれているかのような景色に変わってしまった。この榎のパワーは江戸時代の文献にいくつも残されているが、徳川第14代将軍・家茂の正室・和宮さまが江戸入りする際、そのパワーを恐れてわざわざ榎の見える道を避けたと伝えられている。

<門田稲荷神社(足利市八幡町)>
「下野國一社 八幡宮」の境内に建つ、日本三大縁切稲荷のひとつと言われる。古くから、男女の縁、病・薬、賭け事などとの縁を切りたいと祈願が絶えなかったのだとか。

縁切り寺社は全国で200社あるとも言われている。ほとんどは男女の縁を切りたい(切らせたい)祈願でいっぱいだが、病気や借金、賭け事、不運、貧乏神との縁を切りたいといった思いも、奉納された絵馬から読み取れる。

これだけ縁切祈願が全国各地に浸透してしまった背景には、思ったことをうまく口に出せない日本人特有の気質や、「縁切り」という神頼みで解決したいという思いもあったのかもしれない。口下手にしては、神さまへお願いする祈願内容は、どこでもなかなかヘビーでキョーレツなものばかりではあるのだけれども。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

著者プロフィールを見る
鈴子

鈴子

昭和生まれのライター&編集者。神社仏閣とパワースポットに関するブログ「東京のパワースポットを歩く」(https://tokyopowerspot.com/blog/)が好評。著書に「怨霊退散! TOKYO最強パワースポットを歩く!東東京編/西東京編」(ファミマ・ドット・コム)、「開運ご利益東京・下町散歩 」(Gakken Mook)、「山手線と総武線で「金運」さんぽ!! 」「大江戸線で『縁結び』さんぽ!!」(いずれも新翠舎電子書籍)など。得意ジャンルはほかに欧米を中心とした海外テレビドラマ。ハワイ好き

鈴子の記事一覧はこちら