松阪ポークもおいしいが、レジェンドと呼ばれる山越さんが40年の年月をかけてつくった「松阪豚」のこだわりや、芸術的ともいえる霜降は、まったく別の次元のものといっても過言ではないだろう。

 続いて、ランキング10位に選ばれた「松阪鶏の焼き肉」とは果たしてなんなのだろうか。「松阪牛」で有名な三重県松阪市だが、一般庶民にとってはなかなか手が出る値段ではない。地元民でも1年に一度食べるかどうか……という松阪牛に対して、松阪市のソウルフードとまでいわれているのが、「松阪鶏の焼き肉」なのだ。松阪で焼き肉といえばこの松阪鶏の焼き肉を指すほどの浸透ぶりで、牛肉に比べてリーズナブルなところも人気の秘密なのだとか。

 これだけ地元で親しまれている松阪鶏の焼き肉だが、松阪市以外ではあまり知られていない存在でもあった。そこで、松阪鶏の焼き肉を全国に発信して、まちおこしにつなげることはできないかと、地元有志が集まってNPO法人「Do it! 松阪鶏焼き肉隊」を2010年4月に発足。13年にB1グランプリ初出展、15年には10位に入賞し、その知名度を徐々に上げている。

 Do it! 松阪鶏焼き肉隊によると、松阪鶏の焼き肉は、甘辛の濃いみそダレに鶏肉を絡めて、網焼きにしたものを指す。なぜ松阪市で鶏肉なのかという疑問を抱くかもしれない。実は昭和の時代から、松阪市郊外の農家では、卵を産む鶏を飼っている農家が多く、卵を産まなくなった鶏(廃鶏)を処分する方法として、鶏肉をみそだれで絡め、網の上にのせて焼いて食べるという習慣が生まれてきた、という説がある。

 松阪市を訪れた際には、牛だけでなく、豚、鶏と、全種制覇してみてはいかがだろうか。