おそらく、C・ロナウドが左サイドでかつての威風を漂わせることはないだろう。

 なぜなら、瞬発力の衰えは避けられないからだ。

 C・ロナウドはもともと、コンビネーションでまわりを生かしながらプレーする選手ではない。中盤でパスに絡むと、無残にもボールの流れを遅くしてしまう。不器用さの方が目立ってしまうのだ。また、守備に対する意識も低いため、周りが彼の負担を負う必要がある。相手に攻撃をさせない“強烈なKOパンチ”があったときは良かったが・・・。左サイドアタッカーとしてはもはや苦しい。

 しかし、C・ロナウドには生きる道がある。ポルトガル代表フィジカルトレーナーが、以下のような証言をしている。

「スピードは失うとしても、C・ロナウドの“足が遅くなる”ことはない。これからはエリア内でプレーすることが増えるだろう。シュート力も経験もあるし、駆け引きでマーカーを翻弄できる」

 ゴールゲッターという新境地。欲を張らずに得点に専念できたら、C・ロナウドは新たな伝説を作れる。

 もっとも、本人は自らの能力を少しも疑っていない。むしろ、わからず屋たちを鼻で笑うほど。自己暗示も、彼の異能の一つだろう。今月にレアルと2021年まで契約を延長し、舌も滑らかだ。

「これは最後の契約ではないさ。41歳までは現役を続けたいね」

 英雄の覇気は衰えていない。(文=スポーツライター・小宮良之)