9月に行われたアジア最終予選の2試合では、初戦でUAEに1‐2で敗れた。その後のタイ戦では2‐0で勝利し、星を五分に戻したものの、タイ戦でもなかなか追加点が奪えず、あわや同点ゴールを許そうかという大ピンチもあった。内容的に言えば、かなり危うい試合が続いている。

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は当時、ヨーロッパでは新シーズンがまだ始まったばかりであるが故の、海外組のコンディション不良を苦戦の理由に挙げた。

 だが、あれから1カ月。海外組は、ミラン(イタリア)でほとんど出番のない本田圭佑を筆頭に、それぞれの所属クラブで思うような出場機会を得られていない選手が非常に多い。こうなると、試合勘を含め、彼らのコンディションが本当に上がってくるのか疑わしい。

 さらに、海外組は長距離移動と時差対策という問題も抱えながら、試合のわずか数日前に帰国する。これでは良好なコンディションを保てているはずがない。

 それでも、ハリルホジッチ監督はあくまでも海外組を“優遇”する。

 先ごろ発表された日本代表メンバーの顔ぶれを見ても、これまでとあまり変わり映えがない。特に前線に関して言えば、恐らく「試合に出ていない海外組」が中心となってピッチに立つのだろう。1カ月前、コンディション不良を苦戦の理由に挙げていたにもかかわらず、だ。

 確かに、根本的なポテンシャルという意味で言えば、概ね海外組のほうが国内組よりも力が上ではあるのだろう。

 しかし、現状を考えれば、調子のいい国内組を起用するほうが、日本代表の強化という意味でも、チーム内にまっとうな競争原理を働かせるという意味でも、自然なのではないだろうか。

 にもかかわらず、この数カ月、公式戦で90分間フル出場したことがないような選手に頼るしかないのだとしたら、チームとしてはかなり危機的状況にある。しかも、彼らが20歳そこそこで、大きな成長が期待できるならともかく、実際は30歳前後。我慢して使った末に大きな成長が見込める選手ではないのだ。

 今度のイラク戦は、日本代表にとって、これ以上ないほどに戦いやすい条件が整った試合である。つまりは、真の実力が見えやすい試合となるはずだ。

 勝つのはもちろんのこと、そこでは当然、どんな勝ち方をするかも求められる。

 最終予選は結果がすべて――。そんな言葉を言い訳にしなければならない試合に終わるようなら、日本代表の先行きはさらに暗いものになってしまう。(文・浅田真樹)