そんなサービスを担当するのが、同社の「エキスパート・ドライバー」だ。日本交通グループ約7000名のドライバーのなかから選抜された152名(2015年11月現在)の精鋭ドライバーである。介護職員初任者研修ほか、自動体外式除細動器(AED)、高齢者向け接客研修の受講が義務付けられている。

「接客や運転技術がいいからなれるというものではありません。営業所からの推薦や、社内役員面接も行われます。仮に10人が手を上げても、半分はなれない少数精鋭チームです。そのため、いくら需要があっても、サポートタクシーを簡単に増やすことはできないのです」(同)

 サポートタクシーの導入は、同社内でもプラスの影響が出ているようだ。同社管理部の野村貴史課長はこう話す。

「タクシードライバーは年齢に関係なく働ける仕事でしたが、これまでキャリアパスのようなものがなかった。精鋭乗務員エキスパート・ドライバーを置いたことで、タクシードライバーとしての目標が生まれ、意欲が高まっています」

 日本交通では5年前から新卒採用を本格的にスタートさせたが、今年は約100名の「新卒大卒ドライバー」を採用することに成功したという。

「ただ移動するのではなく、そこに付加価値をつけ、サービスを生んでいく。そこに魅力を感じ、若い人がタクシー業界に入ってきています。タクシーが自動運転者に入れ替わり、10年後には仕事自体がなくなるという人もいますが、サポートタクシーが行っているような個別のサービスニーズはなくならない。必ず人は必要になってきます」(前出の野村氏)

 ディー・エヌ・エー(DeNA)が今月、私有地内で無人運転バスの運用を開始すると発表するなど、自動運転車も現実化しつつある。サポートタクシーサービスは、そうした時代を生き残るための準備であることも間違いないだろう。(ライター・田沢健二)