予選から自己ベストという計算でいくと言う桐生(左から2番目)(写真:Getty Images)
予選から自己ベストという計算でいくと言う桐生(左から2番目)(写真:Getty Images)

 6月25日の日本選手権男子100m決勝。レース後、桐生祥秀は涙をボロボロ流した。

 「本当にこんな形で五輪を決める予定ではなかったし、一番嫌な決まり方だったから……。インタビューも笑顔で受けるつもりだったし、こんな風に人前で泣くのも嫌で、泣くなら勝って泣きたかったけど、あまりにも情けないというか応援してくださった人たちに申し訳ないので……」

 今年は3月の世界室内選手権を経て、アメリカのテキサスリレーでシーズンインをしていた桐生。国内では山縣亮太との対戦で2戦2敗。だがその後の日本学生個人選手権で自己タイの10秒01を出し、自信を持って日本選手権に臨んだ。そして直接対決になった準決勝でも互角のスタートをし、0秒03差で敗れたが余裕を残した勝負をしていた。

 だが決勝では山縣がさらにいいスタートからの加速を見せたので力が入ったのか、30m付近で右太ももがけいれんして力を発揮できず10秒31で3位という結果に終わったのだ。“日本最速”という肩書と自負を持ってリオデジャネイロ五輪に臨みたいという思いが強かっただけに、悔しさは募った。

 その悔しい思いは逆に、「五輪では山縣さんやケンブリッジさんにダントツで勝ちたいし、海外の選手が相手でもしっかり勝ちにいくレースをしたい」と、決勝進出への思いを強くするものでもあった。

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