もちろん、一番の難敵が白鵬だ。38度目の優勝を狙う横綱にとって、史上3人目となる通算1000勝が掛かる場所であり、残すところ“マジック13”。初日から連勝すれば13日目の対戦相手となる東大関の稀勢の里戦に、その1000勝目を掛けることになり、両者にとっての大一番は見逃せないものとなるだろう。

 そして「関脇が元気な場所は面白くなる」と言われるのが大相撲。ときに上位陣を攪乱するベテラン業師の安美錦、豊ノ島のふたりがアキレス腱断裂の大ケガで休場するなか、ともに新関脇の栃ノ心、魁聖のふたりが新たな存在感を示してくれるか。人気力士の遠藤も、先場所は11勝と好成績をあげて復調し、今場所は前頭6枚目の地位まで復活してきた。

 また、幕内だけでなく十両の土俵が今、近年になく熱い。アクロバティックな相撲で話題を呼び、「銭の取れる相撲」で観客を湧かせる宇良のほか、先場所は19歳の新十両ながら優勝争いに加わった佐藤にも注目だ。丸い体で前に出る相撲を身上とし、元中学生横綱でもある佐藤とは、小学生時代から競い合って来たという阿武咲も、1場所で十両に復帰してきた。このふたりのさらなるライバル物語にも期待大なのだ。

 そのほか、先場所は2分34秒もの熱戦を繰り広げた業師の石浦と里山など、小兵力士たちが土俵狭しと動き回るなか、190センチ187キロの体で「湘南の重戦車」の異名を取る朝弁慶の威力も際立っている。

 稀勢の里を中心に、暑い名古屋をさらに熱くする男たちの戦いから目が離せない。

(文・佐藤祥子)