横綱日馬富士(手前)の胸を借りる稀勢の里。稽古の充実ぶりが目をひく=7月4日、愛知県大府市 (c)朝日新聞社
横綱日馬富士(手前)の胸を借りる稀勢の里。稽古の充実ぶりが目をひく=7月4日、愛知県大府市 (c)朝日新聞社

 名古屋場所の注目といえば、稀勢の里の悲願の初優勝なるか、そして3代目若乃花以来、18年ぶりの日本人横綱誕生なるか──この一点に集約されるだろう。

 昇進には優勝が絶対条件とされ、本人ももちろん、その自覚は十分だ。場所前は一門の連合稽古で汗を流す一方、疲労を残さずに休養日を設けるなど緩急をつけ、万全の調整をしたという。

 それまで悪癖とされていた前半戦での取りこぼしも陰を潜め、ここ2場所連続で13勝の勝ち星を上げている稀勢の里。初日の相手は、場所前に肉離れをおこして不安を残す、初顔合わせの御嶽海だ。2日目の相手は、対戦成績が8戦全勝の関脇魁聖で、連勝スタートではずみをつけることもできそうだ。

 それでも懸念されるのは、やはりその精神面だろう。期待されるほどにプレッシャーが掛かり、「ここ一番に弱い」と指摘され続けてきた。ことごとく優勝のチャンスを逃して周囲の期待に応えられなかったのだが、先場所からわずかな変化が見受けられる。緊張のあまりか取組前に目をしばたかせる癖が見られなくなり、代わりに余裕の笑みとも言えそうな、「アルカイックスマイル」をたたえるようになったのだ。

 稀勢の里本人は、「特に意識してやってるわけではないんです」というものの、内面的な変化の兆しとも言え、その期待は高まる。

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