錦織は、芝でプレーすることの難しさを、隠そうとはしなかった。

 さらには、前哨戦のゲリー・ウェバー・オープンで腹筋を痛め、実戦やポイント練習を十分に積めなかったことも、不安材料の一つだろう。ケガそのものは「80から90パーセント」の回復状態だとは本人の弁。開幕までの残り数日間でいかに完治に近づかせ、大会の中で勝ち上がりながら芝に適応し、調子を上げていけるかが上位進出の鍵になるだろう。

 そのような意味では、初戦の対戦相手は“最高”の試金石かもしれない。1回戦で錦織が相対するのは、オーストラリアの剛腕サム・グロス。世界ランキングこそ123位だが、時速263キロの世界最速記録を持つ、テニス界きっての超ビッグサーバーだ。

 両者は1年前のワシントンDC大会(ハードコート)で対戦し、その時は錦織が6-4、6-4で勝利。ただしその内訳は、15本のエースを奪われ、相手のファーストサーブが入った時は80パーセントの確率でポイントを取られている。錦織は握られたブレークポイントを全て凌ぎ、自らは2本のブレークを奪う勝負強さを発揮したが、サーブ攻略に苦しんだのも確かだった。

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