優勝で五輪代表権は手にしたが、自信を取り戻すまでではなかったのだ。だからこそ200m自由形で自己ベストにあと0秒27まで迫る1分45秒50を出して五輪代表を決めたあとの最後の種目だった、200m個人メドレーで日本記録をマークできたのは大きい。「最後の自由形ではストロークが小さくなったし、最後はキックの入りも良くなかったから」と、昨年フェルプスがマークしている世界ランキング1位の1分54秒75を上回る54秒中盤の記録を視野に入れ、五輪での優勝争いがイメージできるまでになったのだ。

 五輪では初日に男子400m個人メドレーが行われる。ロンドン五輪ではライアン・ロクテ(アメリカ)が4分05秒18で優勝したが、その後の3年間では13年と14年に萩野が4分07秒61と4分07秒75を出している一方で、他の選手は4分8秒台後半以降にとどまっている。そんな中での戦いとなるが、4分03秒84の世界記録を持つフェルプスは回避を決断していて、問題となるのはロクテがどこまで調子を上げてくるかだけ。そこで自己ベストを塗り替えて金メダルを獲得できれば、本人が口にする「個人メドレー2種目は金メダル。200m自由形でもメダルを狙い、800mフリーでは4人で力を合わせて絶対にメダルをつかみたいと思う」という目標に、限りなく前進できるはずだ。

(文・折山淑美)