古来、日本人はすべてのものに魂があると考え、供養をしてきました。これは日本人独特の霊魂観によるならわし、習俗といえます。人の死を「肉体から魂が離れること」ととらえ、葬式を起点にお墓参りなどの習俗を通じて、何十年も故人の魂と交流を続けるのです。

 こうした霊魂観からいうと、望まれる葬式とは「故人の魂と気のすむまで別れを惜しむ場」。さらにそこでは「死を広く公にする」という社会的認知の役割も果たしています。

 お金をかけない身内だけの簡素な葬式を望む人も多くいます。しかしそれが、遠い親戚や友人知人の「何の連絡もなかった」「せめてお焼香だけでもしたかった」といった声となり、他者に後悔の念を残すとしたら、非常に残念なことです。目先のことばかりでなく、基本に立ち返って考えることも大切でしょう。

 一方、お墓に関する意識も「一族」から「個人」へと変化し、その概念や形態が多様化しています。個別の条件によって選べる形態は変わりますが、お墓は自分だけでなく、継承する人にも深く関わる問題なので、よく話し合って悔いのない形を決めましょう。

 葬式やお墓の費用は二極化しています。家族に経済的な負担をかけたくないなら、希望するプランを具体化して資金の手当てをしておくと安心です。今から準備すれば自分のフィナーレは思い通りにデザインできます。これを機に葬式やお墓について、じっくり考えてみませんか。(取材・文/塩田真美)

※週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』より

日本葬祭アカデミー教務研究室代表・葬祭カウンセラー 二村祐輔さん
ふたむら・ゆうすけ/葬儀コンサルティング、講演活動などを展開。テレビでも活躍。葬儀社に約18年間勤務し、2000件以上の葬儀にかかわる。『60歳からのエンディングノート入門 わたしの葬儀・法要・相続』(東京堂出版)など著書多数