コストや合理性を追求するあまり、「葬式本来の存在意義や死の尊厳が損なわれているのではないか」という懸念も…(※イメージ写真)
コストや合理性を追求するあまり、「葬式本来の存在意義や死の尊厳が損なわれているのではないか」という懸念も…(※イメージ写真)

 近年、葬式やお墓は値段もスタイルも選択肢が増えてきました。先祖代々受け継がれてきた作法にのっとったうえで、「自分らしさ」を出すことも可能です。週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』(朝日新聞出版)で紹介した、自分らしく、残された家族も困らない葬式、お墓選びのポイントをお教えします。監修は葬祭カウンセラーの二村祐輔さんです。

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 いずれは訪れる自分の死。まだまだ先だと思っていても、こればかりはいつ訪れるかわかりません。親の死で体験した人が多いかもしれませんが、亡くなった直後は慌ただしく、思い通りに事が進まないケースがほとんどです。

 自分らしく旅立つために、またいざというとき残された家族が困らないように、その方針や手立てを決めておくといいでしょう。

 このところ葬式を取り巻く環境が大きく変化してきました。従来は葬儀と告別式を一連の流れで行う伝統的な葬式が主流でしたが、最近は意識が変わり、多様化しています。身内のみの「家族葬」や、宗教的な儀式を行わない「自由葬」、さらには火葬場に直行する「直葬」など、広がりを見せています。

 また、葬儀業界への異業種参入やインターネット普及に伴い、これまで不明瞭と批判されがちだった葬儀費用の明確化が進んでいます。価格競争が生まれ、以前は考えられなかったような格安プランも登場。特に都市部ではコストや合理性を優先する傾向が強く、「読経なし、戒名なし、お墓なし」といった極端なケースもあります。

 しかし、コストや合理性を追求するあまり、「葬式本来の存在意義や死の尊厳が損なわれているのではないか」という懸念も生じています。

 そもそも葬式とは葬儀と告別式の一文字ずつを取ったもので、死者の魂をあの世に見送る儀式と、別れを告げる式典を指します。葬式には遺体への実務的な対処に加え、「魂をあの世へ送り出す」という習俗的、宗教的役割や「死の受容」という遺された者へ決別を促す目的があります。

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