安倍政権になってからの近年、両国の外交が盛んになり、ビザが取りやすくなったことも留学生の増加に影響しているという。

「日本のイメージは本当にいい。1990年に民主化がはじまってから、いちばん支援をしてくれたのが日本です。だからモンゴル人は日本に親しみを持っています。安全な国で、アルバイトをして自分たちで生活をつくれる環境が整っているというのも、親にとっては安心だったようです。お互い蒙古班もありますし(笑)」(スガルさん)

 彼らモンゴル人留学生は、特定の「街」を持たない。ミャンマー人の高田馬場、クルド人の蕨のような「リトル・ウランバートル」は存在しないのだ。

「あえていえば、相撲取りの住む両国……でもモンゴル料理レストランも一軒あるだけだし。モンゴル航空のある日暮里とか、練馬、新宿、千葉……学生は通っている大学のそばに住んでいますね」と3人は困ったように言う。

 モンゴル人留学生たちがコミュニティーの中心としているのは、街ではなくフェイスブックだ。はじめはメーリングリストを使っていたが、いまはほとんどの情報がフェイスブックで共有・拡散されていく。「日本に住んでいるほかの国の人たちには、フェイスブックをここまで活用していることに驚かされます。住む場所は離れていますが、コミュニケーションは取れていると思います」(ウグームルさん)

 日本の地方に遊びに行ったときなども、フェイスブックを介してそこに住むモンゴル人と交流するそうだ。「ゲル(モンゴルの伝統的な移動式住居)には誰でも入っていい、というモンゴルの助け合いの文化ですね」(ウグームルさん)

 どこかの街に固まって住むのではない。そこに遊牧民にルーツを持つモンゴル人らしさが見える。

 日本は便利で、暮らしやすいと3人は口々に言う。ウグームルさんは「とくに秋田は本当に良かった。みんな優しくて」といえば、スガルさんは「大阪大学時代に感じましたが、大阪の人はモンゴル人に似ています。異文化を受け入れる傾向は関西のほうがあるかも」と続ける。

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