「ハワリンバヤル」では、ひときわ声を上げて客を呼んでいる一角があった。「新モンゴル高校」を出て、日本に留学しているグループが、モンゴル料理を提供しているブースだ。民族衣装をまとってモンゴル風のパイ「ホーショール」を売っていたのはツェツェンビレグさん(20)。日本に来てまだ1カ月だ。「アニメで日本に興味を持ちました。食べ物やサービス、日本の文化がとにかく新鮮で面白いです!」と笑顔をみせてくれた。

 新モンゴル高校とは、ウランバートルにある日本式の教育方針を取り入れた高等学校だ。日本に留学経験のある教師が校長を務め、日本語が必修で、日本人の講師による授業も行われている。これまでに300人ほど、日本に優秀な留学生を送り込んできた。スガルさんもウグームルさんもこの学校の出身だ。

 ブースの売り上げはすべて、モンゴルで学んでいる新モンゴル高校の、成績優秀者に寄付される。日本留学の資金とするのだ。「日本にいる先輩たちが、モンゴルの後輩を支えるんです」(スガルさん)そんな助け合いが長年、続けられている。

 モンゴル人留学生のコミュニティーは、こうして拡大を続けている。優秀な人材が日本で学び、祖国に知識や技術を還元していく。スガルさんもウグームルさんも、やがてはモンゴルで起業をしたいと考えている。ハガワチャワさんは「これからモンゴルにも日系企業が増えるでしょう。そのときにモンゴルで日本語を生かしたい」と言う。

 モンゴルに進出している日系企業は、道路や橋などインフラ関連企業が中心で、その数も少ない。しかし資源国として注目されている国だけに、今後の経済成長次第では製造業や観光業などの需要も高まっていくだろう。

 両国の架け橋となるだろう若い留学生たちは、たくましさと、個の強さにあふれているように見えた。(文・写真/室橋裕和)