「我々は走って、走って、走って。それでも走るのをやめられない。まるでフォレストガンプのようにね」(クラウディオ・ラニエリ、レスター監督)

 走ることがチームの哲学だが、岡崎はそれを率先して示している。前線で相手の攻撃にふたをし、プレスバックで守備をサポートし、敵を休ませない。前半10分、レスターは先制に成功しているが、まさに岡崎が先頭に立ったプレッシングの賜だった。敵陣内でプレッシャーのストレスを与え、パスミスを誘発。それを拾ったMFリャド・マフレズが左足で叩き込んだ。

 「走る」と言っても、ガムシャラに足を動かすのではない。正しいポジションを取ることで守りの網を縮め、敵を圧迫する。一方で攻撃も、休まずポジションを修正し、いい距離感を保つことで、こぼれ球さえも自分たちの足下に転がってくる。とても知的で、戦術的な動きと言える。

 岡崎はその体現者となっていた。抜群の献身性を見せると同時に、ダイレクトでボールを叩き、プレーにテンポも作った。何気ないスキル精度の高さが、チームに余裕を与えていた。日本人FWがレスターの戦いを示すことで、抜擢された二人も自由に仕事ができたのである。

 「私は選手にマッチョな戦いを求める。FWから最後の砦を守るような闘争をね。もちろん、戦いは頭も使えなければならない」

 指揮官ラニエリは言うが、岡崎はその先兵ということか。おとぎ話を完結させるには、岡崎のような勇者が欠かせない。

 レスターは次節、5月1日に敵地で名門、マンチェスター・ユナイテッドに挑む。

文=小宮良之