10代の頃から「20歳で東京、
40歳でアメリカ」と決めていた

 翌2017年10月、綾部は予告通りにニューヨークへと旅立つ。40歳を目前とするタイミングでの渡米は、実は本人が「茨城のヘタレなヤンキー」だった時代から長年思い描きこだわった、「20で東京、40でアメリカ」との人生シナリオ通りだった。中2の社会の授業で「地球で一番の都市」と教えられ、「いつか海外旅行ができるようになったら、まずニューヨークに行こう」と心に決めていた憧れの街。売れっ子芸人となってからは収入には恵まれても時間がなく、やっと2015年にまとめてもらえた10日間で、綾部は念願のニューヨーク旅行を果たし、街と恋に落ちた。翌年も10日間かけてロサンゼルス、ラスベガス、ニューヨークを回り、その頃には自分の中で「アメリカで勝負したい」という気持ちが決定的なものになっていたという。

 綾部は渡米を宣言した当時の日本での反響を振り返った。「正直、アメリカに行くって言ったら想像の100倍くらいの反響をいただいて、混乱したんですよね。日本でのキャリアを捨てて、って言われたけど別に捨ててはいないし、英語は確かにできないけど、そんなに大きなことなのか?って」。ケロッとした顔で語るその表情からは、迷いなど一切ない、彼の確信が伝わってきた。周囲がためらうような事を実現することのできる人間は、概して思いが強い、というよりも、いい意味で思い込みが強い。綾部はそんな、典型的に「思い込みの強い」男だ。

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5年間の沈黙は、出オチのための根気ある「フリ」