●プロとして、一品一品、丁寧に

 はじめまして。志麻と申します。

 今回、初の著書『志麻さんのプレミアムな作りおき』 を出版させていただきました。おかげさまで第11刷となりました。本当にありがとうございます。

 私は各ご家庭の台所に出向いて料理を作っています。滞在時間はかたづけまで含めて3時間。冷蔵庫にその日ある食材で1週間分の作りおきをします。

「品数がほしい」という方には15品以上作りますし、「品数は少なくていいので、より本格的な料理が食べたい」という方にはそうします。

 いずれにしても、私が大切にしていることは、たとえ限られた時間と食材であっても、一品一品、丁寧に作ることです。

 私は、日本とフランスの調理師専門学校に通い、フランスの三つ星レストランで修業した後、東京の有名フランス料理店で15年働きました。

 しかし、華やかな調理場に立つうちに、次第に「本当に作りたい料理は別にあるのかもしれない」という思いが頭をもたげてきたのです。

 それは、「家庭料理」でした。

 私がフランスでいちばん感動したのは、華やかなレストランの料理ではなく、レストランのまかない料理、下宿先で出してもらった料理、友達が集まったときに作ってくれた料理でした。それまで私が抱いていたフランス料理のイメージとのギャップが大きかったせいかもしれません。

 フランス人がふだん食べている料理は気取らずシンプルなのに、豊かな味わいでした。その幸福な記憶が少しずつふくらんできたのでした。

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作る時間より食べる時間を大切に