「大学側としては私学助成金が不交付になる基準値を超えないよう、ここ数年、合格者を少なめに出すようになりました。結果、あらかじめ合格者数を絞って少なめに出し、足りないときには追加合格を出して調整しています。遅いケースでは、3月下旬に追加合格をもらい、予備校の入学をキャンセルする人も少なくありません」
3月下旬に合格を通達されて4月にすぐ入学――。自宅から通える場合はまだいいが、地方から上京する学生などは、時間がないなか住まい探しや引っ越しをしなくてはならない。そんな状況に奔走する学生の姿が目に浮かぶが、予備校側も段取りに手間取るのは自明だ。
■厳しかった18年入試
では、高校側は、入学定員管理の厳格化について、どう受け止めているのだろうか? 毎年、東大の合格者を出し、「早慶に強い女子校」として知られる洗足学園(神奈川)の早稲田大、慶應義塾大の合格者数をみてみよう。
◯洗足学園合格者数
(合格者数は左から18年、17年、16年、15年の合格実績。カッコ内はうち現役人数)
慶應義塾大 67人(64人)、72人(69人)、93人(85人)、57人(53人)
早稲田大 70人(65人)、115人(110人)、92人(86人)、75人(69人)
同校では、私学助成金が不交付になる基準値が定員の1.2倍以上から1.17倍以上と厳しくなった16年度には早慶ともに合格者を増やし、影響を受けていない。1.17倍から1.14倍と厳しくなった17年度には慶應の合格者は減ったが、早稲田の合格者は増えており、早慶の合計だとほぼ同じで、この年もあまり影響が感じられない。ところが1.14倍以上から1.1倍以上とさらに厳しくなった18年度は、早慶ともに合格者を減らした。特に早稲田の合格が大きく減った。校務主任の中東誠教諭は、入学定員管理の厳格化の影響についてこう話す。
「16年度、17年度入試では影響をあまり感じませんでしたが、18年度入試では強く実感しました。特に、早稲田に受かると思っていた生徒が不合格になりました。早稲田は2年連続で合格者数を減らし、2年間で3千人以上も合格者が減っているのだから仕方ありませんね」