■被写体のひとりがフェイスブックを通じて特別な存在に
すぐに自分のブログを開設し、まずはエッセイなどを中心に発信し始めた。今から10年ほど前だ。
そうしているうち、さち子さんの文章を読んだ読者からコメントが寄せられるようにもなった。何より自分が書きたいことを自由に発信できることが嬉しかった。
「ブログを書いていると、風景や人物の写真も添えたくなってきたんです。いい写真が撮れるように一眼レフを買いました。気づけばカメラにもどっぷりはまっていました」
書く喜びを再認識し、写真も撮り始めたさち子さん。文学賞はもちろん、写真賞にも精力的に作品を応募するようになっていった。
「好きな被写体の一つが“ロードバイク”。いい写真が撮れたら、撮影させてくれた人たちにデータをあげたりして。彼は多くの中のひとりという存在でした。そのころ、フェイスブックが出てきて、“友達”になったのが、特別な存在になっていくきっかけでした。彼と知り合って4年目くらいのことですね」
フェイスブックでつながったふたり。どちらからともなく次に会う約束をし、自然な流れでつき合うように。さち子さんはこのとき、48歳。
「男性を好きになることはありましたが、恥ずかしながら両想いになって、結婚を意識したのは彼が初めてでした。彼といると楽しい。もしかしたら結婚するんだろうなあ、と」
そして、彼とは3年間の交際期間を経て、結婚することになる。
■週末は往復2時間かけて彼の家に通う日々
さち子さんと彼の家は片道20キロ、車で1時間の距離。往復2時間かかる。つき合い始めのころは、お互い休みの土日、泊まらずに両日日帰りで、さち子さんが彼の家に通った。彼は一度結婚をしたが、離婚して、子どもはなく、ひとり暮らしだった。
「1年ぐらいしたら、さすがに面倒臭くなって、土曜日は泊まるようになりました。親には『彼の家に泊まってくるから』とは言いませんでしたけれど、薄々はわかっていたと思います」