その背景には、芸能界における「情報統制」の歴史がある。
音楽業界に限らず、かつての芸能界はスターを生み出す過程で、ある種の「情報統制」にも心血を注いできた。
スターの神秘性やオーラ、“浮世離れ感”を形成&維持するため、イメージにそぐわないプライベートに関する情報が芸能界の外に漏れないように細心の注意を払ってきた。
情報統制上、大手メディアの協力も不可欠ということで、芸能人にとってプラスになる情報を主に扱うスポーツ紙をはじめとする大手一次情報メディアに対しては、読者の興味を引くスターの独占インタビューの機会を提供したり、スクープ情報を提供したり、時には所属事務所サイドが記者を会食や酒席で接待したり、レコード会社や映画会社が“あごあし枕付き”の出張取材に招いたりもしてきた。
かつてほどではないが、現在もその名残りはあり、人気アーティストの新曲リリースや映画の公開、ドラマの製作ニュースの大半は、大手スポーツ紙の報道によって真っ先に世間に広まることになる。
このように有史以来、「情報統制」に力を入れてきた日本の芸能界にとってネットは日頃から付き合いがあり、太いパイプを持つ大手一次情報メディアと異なり、自分たちの情報統制が効かない招かれざる客だったのである。
もちろん、ネット誕生以前から芸能界にとってネガティブな情報を扱うメディアはゴシップ誌をはじめ一部存在していたわけだが、情報拡散力という観点からすると、その影響力は芸能界全体からしてみれば、脅威という程のレベルはなかった。
そんな中、大手芸能事務所や大手レコード会社、大手映画会社の中には対ネット戦略として情報や画像のネット上での使用を禁じたり、ネットメディアの取材に応じないなど、ネットという存在自体から目を背けようとした時期もあった。
“アンチネット”路線の最たる例が、今年1月まで所属タレントの会見写真などをウェブニュースに掲載することを禁した「ジャニーズ事務所」だろう。