実は、落合は巨人時代の95年9月9日のヤクルト戦(東京ドーム)でブロス、96年8月11日の中日戦(同)で野口茂樹と2年連続でノーヒットノーランをやられていた。それだけに、「3年連続でかかわるわけにいかんだろう」と必死だった。

 だが、打席では、格の違いを見せつける。1ボールから外角球を4球続けてファウルし、小池が内角に投げざるを得ないよう巧みに誘導する。そして、カウント2-2からの7球目、狙っていた内角直球が真ん中寄りに来るところを「待ってました!」とばかりにフルスイングすると、チーム初安打の左翼線二塁打になった。日本ハムは直後、代打・広瀬哲朗のタイムリーで、ようやく一矢を報いた。

 球界最年長、43歳の執念の一打に、「あと5人」で記録を阻止された小池は「落合さんはスゴイ打者ですから」と脱帽するしかなかった。

 しかし、巨人時代だったら、たとえ敗戦でも「落合、意地のノーノ―阻止!」と大きく報道されていたはずの快事も、翌日の新聞では、イースタンで日本ハム“弟"が17年ぶりに優勝を遂げた記事と抱き合わせで、見出しも小さめという不遇な扱いだった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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