渡辺貞夫は3度目の東京JAZZ参加。2017年はデイヴ・グルーシン、リー・リトナーらと1970年代の『カリフォルニア・シャワー』のナンバーを演奏した。(c)第16回東京JAZZ
渡辺貞夫は3度目の東京JAZZ参加。2017年はデイヴ・グルーシン、リー・リトナーらと1970年代の『カリフォルニア・シャワー』のナンバーを演奏した。(c)第16回東京JAZZ
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アルトサックスを手にする、それだけでも絵になる。(c)第16回東京JAZZ
アルトサックスを手にする、それだけでも絵になる。(c)第16回東京JAZZ

 8月31日(金)、9月1日(土)、2日(日)に東京、渋谷で行われる「17th TOKYO JAZZ FESTIVAL」に渡辺貞夫がビッグバンドを率いて参加する。この東京JAZZは、NHKホール、代々木公園ケヤキ並木などで開催。ジャズ界の巨匠、ハービー・ハンコックやキューバの歌姫、オマーラ・ポルトゥオンド、ロバート・グラスパーなども来日する。渡辺貞夫オーケストラは9月2日夜にNHKホールで演奏する予定だ。デビューして68年、85歳にしてなお活き活きとしたアルトサクソフォンの音を響かせる。常に第一線で世代を超えて若いミュージシャンとともにステージに立ってきた。

【写真】渡辺貞夫さん。アルトサックスを手にする、それだけでも絵になる。

「若いミュージシャンとやるのは当然でしょう。だって、僕よりも上のミュージシャンはほとんどいませんからね。今は誰とやっても、後輩ばかりです」

 そう言って笑うが、自分よりもはるか年下のミュージシャンにもプロデュースを委ねてしまう姿勢は音楽家の間でもリスペクトされている。2000年2月、ニューヨークで渡辺のレコーディングを見学した。マンハッタンのヴァーリック・アベニューの「Chang King Studio」。当時渡辺は66歳で巨匠の域。それなのに、デビュー間もない31歳でリーダーアルバムを1枚しかリリースしていないリチャード・ボナに自分のプロデュースを任せていた。

「僕はずっとアフリカの音楽に憧がれてきました。リチャードは僕がまさに欲しかったアフリカの音を持つミュージシャンです。彼はアメリカ生まれのアフロアメリカンではなく、カメルーンで生まれ育った。本物のアフリカのリズムを持つミュージシャンです」

 スタジオではリチャードのひらめきで、ごみ箱をパーカッションの代わりにして叩き、録音をした。その発想に渡辺は目を細めていた。

「西アフリカのポピュラー音楽、ハイライフの音が欲しいと言うと、リチャードは似た音ではなく、本物のハイライフをやってくれる。僕はうれしくてたまらなかったわけですよ」

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