選手としても指揮官としても輝かしい実績を誇るジダン監督 (c)朝日新聞社
選手としても指揮官としても輝かしい実績を誇るジダン監督 (c)朝日新聞社
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 名選手、名監督にあらず――。これはサッカー界に限らず、多くのスポーツで言われるフレーズだが、そんなものはどこ吹く風とタイトルを重ねるスターもいる。近年では、レアル・マドリードの監督を辞任すると発表して世界中を驚かせたジネディーヌ・ジダン氏や、プレミアリーグを独走優勝に導いたマンチェスター・シティーのジョゼップ・グアルディオラ監督の名前が頭に浮かぶだろう。

 ジダン氏は現役時代にフランス代表として1998年ワールドカップ(W杯)と2000年欧州選手権(EURO)で優勝を果たしたスターだった。卓越したボールテクニックと視野の広いプレーは、トップ下という意味では20世紀最後のスーパースターと言って良いだろう。クラブレベルでもユベントスとレアルで世界一を獲得し、06年W杯決勝で世界を驚かせた退場劇を最後に引退。指導者への道を歩んでいた。

 そのジダン氏が監督として表舞台に姿を現したのが16年1月。レアルが成績不振を理由にラファエル・ベニテス監督を解任したタイミングで後任に就いた。このシーズン、リーグ戦は優勝できなかったが、勝ち残っていた欧州チャンピオンズリーグ(CL)をいきなり制覇。すると、翌シーズンはリーグ戦も制覇した上にFIFAクラブW杯も優勝。さらにCL連覇達成とタイトルを積み上げる。そして今季はリーグ戦こそタイトルを逃したが、クラブW杯とCLの優勝を継続した。

 先日、辞任を発表したが、2シーズン半でレアルにもたらしたタイトルは9つに上る。奇抜な戦術を採用するわけではないが、スター揃いのレアルの選手たちをまとめ上げ、持てる力を発揮させるカリスマ性という意味では、間違いなく名将だ。今後、少し力の劣るとみられるクラブを率いた時にどのような成績を残せるかで、本当の意味で名監督と呼ばれる存在になるのかどうかが決まるのかもしれない。

 マンチェスター・シティで今季勝ち点100という強烈な数字を達成したグアルディオラ監督は、もう少し戦術家という側面が強いと言えるだろう。現役時代に名門バルセロナの中盤の核としてリーグ優勝6回、欧州の頂点にも1回立っている。W杯こそ負傷で2大会連続で出場を逃すなど縁がなかったが、中盤の底からゲームを組み立てる司令塔として世界的にも知られる名手だった。

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まさに現代の名将