日本に目を向けると、東京五輪に向けたチームを率いる森保一監督が現代のトップだろうか。日本代表として93年の“ドーハの悲劇”を経験した森保は、当時のハンス・オフト監督に見出された選手だった。派手さはなく、実直なプレーが持ち味だったが、現役時代を過ごしたサンフレッチェ広島の監督に就任すると、リーグ戦で3回優勝の輝かしい実績を作った。

 そして、今後にもうワンステップが期待されるのが、ジュビロ磐田の名波浩監督か。日本代表がW杯に初出場した98年フランス大会の「10番」は、古巣の磐田を率いて試合中の修正力などに力を発揮し、名将と呼ばれる素地は見せている。現役時代に黄金時代を築き上げた古巣をタイトルに導けば、名実ともに日本が生んだ名選手であり、名監督と言えることになるだろう。

 ここでは紹介しきれなかった中にも、欧州の“優勝請負人”カルロ・アンチェロッティ氏や、アトレチコ・マドリードの“闘将”ディエゴ・シメオネ監督、フランス代表を率いるディディエ・デシャン監督など、選手として国際大会で活躍し、監督としても名将と呼ばれる存在はいる。現役時代に華麗なテクニックを見せたが指導者としては実直な戦術を採用する人もいれば、その逆もいる。もちろん、シメオネ監督のように現役時代のイメージそのままという指導者になる人もいる。

 選手たちは年を重ね、次々にピッチを離れていく。しかし、来季からイングランド代表で中盤を支えてきたスティーブン・ジェラード氏とフランク・ランパード氏の2人が監督デビューするなど、第2のサッカー人生として新たな勝負の場に身を投じる名選手は数多い。そこから、どれだけ名将と呼ばれる監督が生まれていくのかも、サッカーを楽しむ大きな要素の1つだ。