しかしはじめに300タカと僕がいってしまうと、間をとって400タカに落ち着くのが関の山。なんとか300タカにもっていくには、ただ黙るしかない。

 450タカといわれて黙っていると、別の男が、400タカといいはじめる。そこでも黙っていると、350タカにさがっていく。つまり黙っているだけで、運賃はさがっていくのだ。

 そして300タカになったところで妥結。

 こんなにうまくいかないこともあるが、とにかく値切りのコツは黙ることなのだ。

 この空港にはじめて降りたとき、僕は盛んに値切った。そしていつも失敗していた。

 あるとき開眼した。

 黙っていることで運賃はさがっていく。

 値切りの極意を、僕はこの空港で身につけた。

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