では、学部によって違いはあるだろうか。早慶それぞれ1位になった金融機関の内訳を見てみよう。
■みずほフィナンシャルグループ=慶應義塾大1位
法36、経済45、商30、文10、総合政策9、環境情報9、その他(理工学部、大学院)7
■三菱東京UFJ銀行=早稲田大1位
法10、政治経済17、商22、社会科学6、文4、教育16、文化構想9、国際教養5、人間科学5、その他(スポーツ科学、理工系3学部、大学院)11
早稲田の商、慶應の経済は、大手銀行に強い。この2学部には金融政策を深く掘り下げる講義、ゼミが多く、大学での学んだ知識が仕事で生かされることになる。
早稲田の文と文化構想、慶應の文からもそれなりに就職者を出している。文学部系の就職先としてマスコミ(新聞、出版、テレビ、広告)がたくさんいると思われがちだが、金融、商社、メーカーは意外に多い。文学部系はそれだけ学生に多様性が見られることを示している。
三井住友銀行は関西学院大が早慶を抑えて1位となった。同行は住友銀行、神戸銀行といった関西系の大手都市銀行などの合併という歴史を持っている。住友、神戸の2行には関西学院大出身者が多かった。その伝統がいまに引き継がれている。
日本生命保険の上位15校は、他の銀行、生損保とは明らかに違っている。首都圏に集中しておらず、各地域の大学がバランス良く並んでいる。上位9校は関東5、関西4となっており、続いて中京大(愛知)、福岡大(福岡)、東北学院大(宮城)が並ぶ。日本生命保険が全国で多くの拠点を持っており、その地域で同社への就職実績が高い大学が上位に顔を出している。1位の早稲田大32人と、15位の青山学院大と東北学院大12人では就職者数に極端な開きはない。
それに比べて、第一生命保険は、各地域の大学が顔を出すが、1位2位の早慶の就職者数が突出している。
会社の人事採用戦略に学生がどのように就活で動いたか。こうしたところから大学の特徴が見えてくる。
※早慶の就職者数は大学公表の資料から。三菱東京UFJ銀行は2018年に三菱UFJ銀行と改称
(文・小林哲夫/教育ジャーナリスト)
【ランキングの見方】
大学通信調べ。「マイナビ・日経 2018年卒大学生就職企業人気ランキング」(マイナビと日本経済新聞社の共同調査。有効回答4万2702人)に掲載された文系総合ランキング、理系総合ランキングそれぞれの上位企業(一部除く)への就職者数を大学別に集計した。東京大、京都大などアンケートに回答していない大学は未掲載。