「こんな所では成長できない」と上司に心を閉ざし、指示待ち族になってしまう。理想に燃えて社会人デビューしたが、会社の実情とのギャップに直面して立ちすくむ。仕事の細分化、仕組み化が進む職場で、仕事へのモチベーションが高まらない――。せっかく入った会社にうまく適応できず、早々に退職したり、精神を病んだりする新入・若手社員が目立つようになってきている。
『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか』(PHPビジネス新書)などの著書がある、リクルートワークス研究所主幹研究員の豊田義博氏は、多数の若手社員や、彼らと接点のある上司や先輩、人事担当者にインタビュー。それらを基に、彼らが育ってきた社会環境や教育、そして職場のどんな変化が、新入・若手社員を冒頭挙げたような適応障害に陥らせているのかを描き出している。
まずは「理想と現実のギャップ」から見てみよう。
「今の新入・若手社員には、社会はもっとこうあるべきだという意見をしっかりもつ人が多くいます」と豊田氏。2012年にワークス研究所が実施した調査によると、社会に貢献したい、人の役に立ちたいと考える人の割合は、1980年生まれ以降の若い世代で、上の世代に比べて多くなっている。
新卒採用ではわが社がいかに社会に貢献しているのか、理想的で明るい面を強調する会社は多い。「この会社の事業はなんて素敵なんだ! ここで働いてみたい」と感動した学生が入社することになる。ところが入社後、想像と現実の間の大きなギャップを思い知らされる。社内で交される会話や情報は、自社の売りたいものをいかに顧客に買わせるか、景気動向や競合情報といったものばかり。社会に貢献したいという思いが強いが故に、会社の外面と内面のあまりの違いに、強い違和感を抱くことになる。「こうした幻滅が、新入・若手社員の目、耳、心に強いフィルターをかけることになります」(豊田氏)