先に見てきたとおり、日本企業に色濃く残るタテ社会は、若手世代が生き生きと働くことを大きく阻害している。彼らが子どもの頃から慣れ親しんできた、ヨコのネットワークを駆使するコミュニケーションスタイルと、決定的に合わないのだ。「若手がもつ長所を殺し、欠点をクローズアップしてしまう。無駄な仕事を増やし、長時間労働を助長する側面もあります」(豊田氏)
上司という言葉は「上に立って司る」という文字通り、マネジャー(管理職)とヒラ社員(メンバー)の上下関係を示しており、日本企業のタテ社会を象徴している。
だが現代のあるべきマネジャーは、上から目線で部下を管理する存在ではない。マネジャーはグループの使命、目標を達成するため、メンバーに仕事を託す。メンバーは主体者として仕事に携わり、結果を出す。マネジャーは結果の総和で使命、目標を達成できるようにメンバーを支援する存在であり、上下関係ではなく、主体者=プレイヤーと支援者=コーチの関係だ。「上司、部下というタテ社会の関係から、マネジャー、メンバーというフラットな役割関係に変えて行く。それだけで若手との仕事のしやすさは、劇的に変わるはずです」(豊田氏)。
上司という言葉を頭の中から消す。それが職場を新入・若手社員がいきいきと働ける場所に変え、ひいては早期退職やメンタル障害を減らすことにつながるのだ。 (五嶋正風)