AERA2023年2月13日号より
AERA2023年2月13日号より

 またニューロスペースのプログラムを用いて、早稲田大学政治経済学術院の大湾秀雄教授らが行った研究(21年)でも、睡眠改善で生産性が上昇することが明らかになった。

「日中の覚醒度合いや睡眠の満足度、睡眠の効率性や規則性など六つの指標に基づいて評価した結果、プログラム参加者の睡眠改善効果が明らかになりました。さらに、睡眠改善が生産性に及ぼす影響を検証したところ、時間管理や集中力、仕事の成果なども統計的に有意に改善しました」(小林さん)

 1人当たりの生産性を年間800万円と仮定すると、1人当たり年間12万円の生産性の向上と算出されたという。

「低い生産性で働きたいと思っている人は本来いないはずです。限られた時間の中で、最大限睡眠の質を向上させて、ハイパフォーマーとして働きたい。こういう気持ちを持っている従業員が、理想の睡眠を実現できるように、労働環境の整備をするのは企業の責務だと思うんです」(同)

 長らく日本企業には寝ないで働くことが良しとされる風潮があった。今後は眠れている企業ほど評価される時代がくる、と小林さんは強調する。

「フレックス制度の導入や、上司が積極的に仮眠をとる姿勢をみせることで“寝てもいいんだよ、なぜなら眠る会社が儲(もう)かるんだから”という文化を醸成していくことが、多くの日本企業に求められています」

(編集部・高橋有紀)

AERA 2023年2月13日号より抜粋