イギリスや米国をはじめ、多くの国ではクラミジア検査の受診やコンドームの使用を積極的に促している。2008年、イギリスでは、16歳以上に対してクラミジア感染症の治療薬であるアジスロマイシン(Clamelle)を処方箋なしで販売することが許可された。検査キットで陽性反応が出た場合、その結果を持って薬局に行けば、抗生物質が手に入るという仕組みだ。不妊症の発症率の減少に役立つかもしれないという考えから導入されたという。
だが、米国における16~25歳の性的にアクティブな女性のクラミジア検診率は、50%未満であると推定されている。日本はというと、検診率はほぼゼロであろう。というのも、四天王寺大学の楠本久美子氏の報告によると、コンドームが避妊とエイズ予防に役立つことを認識している大学生は58.9%、性行為でクラミジア感染することを自覚している大学生はたったの0.9%だったからだ。
私が非常勤内科医として診療しているクリニックは新宿、立川、川崎駅の駅ナカに存在するため、若年女性の受診が多い。緊急避妊薬を処方するのも稀ではない。私は、緊急避妊薬を処方するとき、性感染症の検査を必ず勧めるようにしている。女性には、自分の体を自分自身で守ってほしいと思うからだ。カップルで診察室にやってきたら、性感染症はパートナーと一緒に治療することが大切であることも伝えている。
性感染症を早期に発見し、早期に治療をすれば、性感染症が原因の不妊症を防ぐことができる。もちろん、不妊症には様々な原因がある。不妊症の原因となる因子が複数重なっている場合もあれば、原因が特定できないこともある。だが、性感染症は治療が可能だ。定期的な性感染症の検査により早期に発見し、治療さえすれば、不妊症に至るまでに食い止めることができる。
■「性感染症の検査って、やった方がいいの?」
婦人科に行くことがそもそも億劫である、仕事が忙しくて診療時間内に病院を受診できない、陰部のトラブルは言いにくいから相談しにくい、といった悩みをよく聞く。実際に、クリニックで緊急避妊薬を処方した女性27名に聞いてみたところ、たった7名しか性感染症の検査をしたことがなかった。「性感染症ってなんですか? 性感染症の検査って、やった方がいいのですか?」と質問され、性感染症のいろはから、検査の必要性を説明することもしばしばだ。