滝藤賢一(たきとうけんいち)/ 1976年生まれ。愛知県出身。舞台を中心に活動後、映画「クライマーズ・ハイ」(2008年)で注目される。映画の代表作に、「許されざる者」(13年)、「64-ロクヨン-」(16年)、「孤狼の血」(18年)など。ドラマは「半分、青い。」(18年)のほか、「探偵が早すぎる」(18年~)シリーズでは主演を務める。23年3月から主演ドラマ「グレースの履歴」(NHK BSプレミアム)が放送予定。(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
滝藤賢一(たきとうけんいち)/ 1976年生まれ。愛知県出身。舞台を中心に活動後、映画「クライマーズ・ハイ」(2008年)で注目される。映画の代表作に、「許されざる者」(13年)、「64-ロクヨン-」(16年)、「孤狼の血」(18年)など。ドラマは「半分、青い。」(18年)のほか、「探偵が早すぎる」(18年~)シリーズでは主演を務める。23年3月から主演ドラマ「グレースの履歴」(NHK BSプレミアム)が放送予定。(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

 主役でもバイプレーヤーでも、独特の存在感を放つ滝藤賢一さん。劇場用長編としては初主演映画「ひみつのなっちゃん。」では、ドラァグクイーン役を演じている。今、売れっ子として数多くの作品に出演する滝藤さんが、役者として望むこととは。

【写真】滝藤賢一さん初主演、映画「ひみつのなっちゃん。」の場面カットはこちら

 原点である無名塾で教わったのは、舞台上で普通にしゃべっている会話が、一番後ろに座っているお客さんに届く“通る声”を出すこと。

「当時はもう、怒鳴り散らしてましたね(笑)。だって無名塾の舞台ってキャパ2千人とかザラでしたから。“ウィスパーで台詞を言いなさい”と言われても、僕の実力では絶対聞こえませんし(笑)。それに、若い頃って唾飛ばしまくって、汗だくになって、舞台上を縦横無尽に走りまくることで、熱演した気になるじゃないですか。誤魔化してるじゃないけど、そんな自分が好き!みたいな。生きてるぜオレ!みたいなね(笑)。でも芝居って相手役とセッションすることが楽しいんでしょうね。自分がどう見えたいというよりも、相手の台詞、表情や動きを観察して、そこから生まれるものを信じる。だから最近の僕は“もう好きにやってー、それを見てるから”というスタンスで現場におります。ラクになりました」

 今は、作品全体の中で、自分の芝居の核のような部分に爆発力を持っていけるよう心がけている。

「だからこそ、自分が出演した作品は必ず観ます。まだまだ発展途上ですし、学ぶことが多い。それに、物語の中で自分がどう映ったのかも確認したい。次に生かせますから」

 破天荒な部分を残しつつ、大人としての成熟も持ち合わせている。そんな滝藤さんの自由な存在感は、若手俳優にとっての憧れでもある。

「武勇伝、残したいですねぇ(笑)。時代は違えど破天荒でいたいといいますか。無名塾時代、仲代達矢さんの武勇伝などを聞いて育ってますから。33歳だった三國連太郎さんが老人を演じるのに、前歯を10本抜いたという話は有名ですものね。僕は歯を抜くのは絶対嫌だけど(笑)。嫌というか、できませんよ。そんな発想もできませんし。今回の映画でも、本田博太郎さんが手首に赤い紐を巻いているんですが、本田さんが演じる役がクイーンの大会で1位になったときの衣装の端切れなんだそうです。カッコ良いじゃないすか! そういうことを考えるのが俳優の醍醐味ですものね!」

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