近藤の采配の妙とスタッフ全員の熱意、俳優たちの意欲によって“変身第一号”は、視聴率30.5パーセントを獲得して好調に滑り出したが、予期せぬところから問題が持ち上がる。
JACL(日系米国市民協会)が、『このドラマによって日系米国人に対して間違ったイメージを生じさせるのではないか』、『反米感情をあおり、日米関係に好ましくないのではないか』と批判運動を展開しはじめたのだ。
近藤はあらゆる日系米国人の声に耳を傾けて問題解決のために奔走するが、最終的にNHKはこの数年続けた「大河ドラマ」の日系放送局による再放送を中止するという決断をくだす。
パイオニアに艱難辛苦はつきものだが、制作面すべてで困難の連続だった。平均視聴率は21.1パーセント。決して高視聴率とは言えない数字だが、近藤は「山河燃ゆ」の成果を以下のように締めくくっている。
「年間平均視聴率は、『徳川家康』より覚悟通り低下した。しかし、“大河離れ”の激しい若年層に限ってみれば、『家康』を超える数値を示し、新たな視聴者を獲得した。中学・高校の文化祭の季節、このドラマをとり上げたい、という若々しい声の申し込みが、これまでの『大河』では考えられぬ程多かったことが、そのことを証明している。」
視聴率だけでは測れない成果を、「山河燃ゆ」は内包していた大河だった。(植草信和)