―― 早稲田大学の卒業後は。
岡山大学医学部に編入して医師免許を取得しました。
―― 医師を目指すうえで心がけていたことはありますか。
極端にいえば、医学部に入ったら医師になる以外ない。ある意味、自分の選択肢を狭めてしまうんです。だからこそ、学生のうちにできるだけ社会経験を積んでほしいですね。
―― 実際にどんなことを?
私は小さなバーの経営や舞台女優、アイドル活動もしていました。卒業後は世界中を旅したり……。あまり参考にならないと思います(笑)。
―― そうやって人とのつながりを大切にしていたのですね。
そうですね。知人から医師が運営しているバーを紹介され、いつしかそこでスタッフとして働くようになりました。すると、そこにメドピア代表で医師の石見陽先生が訪れて、私のキャリアに興味を持ってくださって、「Health 2.0」を統括してみないかって。グローバルでスケールが大きく、テクノロジーにも興味があったので、即断で「はい」と返事をしました。
テクノロジーの発展が
医師を「攻める」に変える
―― どう変わると考えますか。
まず、医師は事務作業が多いので、テクノロジーを導入して簡便化する。もう一つは、医療従事者同士の連携です。現在も週2.5日ほど臨床に出ていますが、医師とコメディカル、ケアマネジャーなど各々が持っている情報が断絶していて共有できていないんです。
医師も忙しくなれば、心に余裕がなくなる。ただその忙しさが医療行為からではなく事務作業や情報の不足からだったら、テクノロジーで負荷を減らせるし、もっとアクティブになれる。とはいえ、医療のベースは人間による診療です。医師とAI、どちらに「大丈夫ですよ」と言われて安心できるか。医師ですよね。
だからこそ、アナログ的な部分を保ちつつ、それを補う意味でテクノロジーの意義があると思います。
(文・構成/井上和典)
※AERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』から抜粋