上田悠理医師「テクノロジーの発展が、医師を『攻める』に変える」(撮影/小林茂太)
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 医師を目指すうえで、覚悟を決めた瞬間がある。医学部志望生向けのAERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、法学部から医学部へ人生の舵を切った、訪問診療医の上田悠理医師に、医の道を選択する「覚悟」を尋ねた。

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 柔和な表情で、一つひとつ丁寧に言葉を紡ぎ出すように語る。だが、取材中、幾度となく発した言葉がある。

「即断即決です」

 形成外科医や訪問診療医として活動する上田悠理医師。30歳という若さながら、昨年、医師専用コミュニティーサイト「MedPeer(メドピア)」が主宰するヘルステック・カンファレンス「Health 2.0 Asia – Japan 2017」の統括ディレクターも務めた。

 医療・ヘルスケア領域の最新テクノロジーの活用事例を紹介するこのイベントは、ある意味、上田医師の「主戦場」でもあった。医療にITが入らないと医師がつぶれてしまう―― その危機感を常に抱いているからだ。医療にイノベーションを起こすために、上田医師が「即断」したこととは。

法学部から医学部に編入
アイドル活動も

―― 大学時代はどんな生活を。

 まず、高校卒業後に入学したのは、早稲田大学法学部でした。思いっきり文系です。大学3年生になってIT企業や外資系コンサルティング会社など普通の就活もしていました。ですが、当時出会った先輩に話を聞くと、激務で体がボロボロになりストレスで歯が抜けた人もいると言われ……。自分が入社して果たして幸せになれるのか、少し立ち止まりました。 

 そもそも、会社や組織の「歯車」になりたくない思いもありました。子どものころから「あれしなさい」と言われるのが苦手で。人に向き合えて、かつ意思決定権がある仕事は何かって考え始めたのです。

―― 考えた結果は。

 そうだ、医師になろうって。

―― そんなに突然?

 はい。就活を通じて、病院にとどまらない医師の働き方の可能性を知り、そもそも医師への興味が湧いていました。即断即決で就活をやめて、医学部編入に向けて、すぐに勉強に切り替えました。猛勉強しましたよ。

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医師とAI、「安心」はどっちに?