多くの人が混乱するのは、法律的には現実的に成り立っていないほうの関係(婚姻関係)が支持されるにも関わらず、現実は、法的には弱いけど現実に成り立っている方の関係(事実婚関係)に動いていく力が働くからです。「秩序」VS「自分の気持ち」という問題には決まった答えなどなく、一人一人が生きながら個別に判断していくべき永遠のテーマのように思えます。豊原さんも「いろんな思いの中で暮らしている。それぞれに、この状況に対して向き合って日々向き合って、生きている」と会見で言っています。
こういう板挟みのとき、人の気持ちや態度は大きく分ければ、
・どちらとも「うまく」やっていきたい(または「波風を立てたくない」)
・どちらかを選ぶ
の2つです。気持ちと態度は必ずしも一致しないので、そこからさまざまなドラマや修羅場が生まれます。
以前、ご相談においでになっていた男性・Aさんは、はっきりおっしゃいました。
「自分は、(不倫相手と妻の)どちらともうまくやっていきたい」
私は正直な人なんだな、と思いましたが、当たり前のことですが、それで話がおさまるはずはありません。妻が激高して「そんな都合のいいこと許されると思っているの」、「日本は一夫一妻制なのよ」、「人間としておかしい」、「私の何が悪かったの」などさまざまなことを言いましたが、Aさんは
「何と言われても、それが自分の本当の気持ちだから」
と一貫していました。
そういうAさんのような例は極めてまれで、本音では「どちらともそれなりにうまくやっていきたい」「波風を立てたくない」と思っていても、その通りに言うと炎上してしまいますから、そうはおっしゃらないケースが大多数です。
妻には彼女の存在を隠し続けて、彼女には「妻とはうまくいっていない、離婚する」というのも結局、どちらともうまくやっていきたいということです。発覚したら、妻には「彼女とは別れる」と言い、彼女には「もうちょっと待ってて」などというのも同じです。