ネッククリッピング術の最大のメリットは根治性の高さです。
「クリップをかけると脳動脈瘤への血流を完全に遮断できるので、再破裂のリスクはほとんどありません」(同)
また、全国で広くおこなわれているので、多くの医療機関で治療を受けられるのもメリットです。
デメリットは手術時間が平均3~5時間、入院期間も2週間程度と長く、患者の負担が大きいこと、頭蓋骨を開いて脳に直接ふれるので血管や神経を傷つけて合併症につながるリスクがあることです。
一方、カテーテルを使ったコイル塞栓術は直径2ミリほどのガイディングカテーテルを足の付け根にある大だい腿たい動脈から入れ、モニターで確認しながら首の内頸(ないけい)動脈あるいは椎骨(ついこつ)動脈まで進めます。そこにマイクロカテーテルを通して脳動脈瘤の位置まで到達させたらマイクロカテーテルからプラチナ製の軟らかいコイルを少しずつ出して脳動脈瘤に詰め、血液が流れ込まないようにします。ネックが広い場合は、風船状のバルーンカテーテルや、ステントという細かい網目状の金属の筒を併用します。
コイル塞栓術のメリットは開頭しないため脳に直接ふれることがなく、手術時間は2時間程度、入院日数も5~7日ですむので、患者のからだへの負担が少ないことです。日本ではまだ治療全体の4割ほどですが、増加傾向にあります。
「この治療には日本脳神経血管内治療学会による専門医制度があり、脳血管内治療を100例以上、そのうち20例は自分が施術したという実績と、筆記試験によって認定されます。専門医であればほぼ同程度の実力をもっているといえるでしょう」(同)
デメリットは治療後にふたたび脳動脈瘤に血液が流れ込む「再開通」の可能性があり、再破裂の危険性も数%あること、専門医が偏在しているため治療を受けられない地域があることなどです。
■経過観察 脳動脈瘤の大きさにより すぐに治療しない場合もある
脳動脈瘤が破裂したくも膜下出血は外科治療をおこないますが、未破裂の脳動脈瘤は、必ずしもすぐに治療が必要とは限りません。一般的に直径が5ミリ未満の小さな脳動脈瘤の場合は破裂する危険性が低いため、破裂するリスクと治療による合併症などのリスクをよく検討して、定期的な経過観察を続けるという選択肢もあります。
日本人の脳動脈瘤患者について調べた「日本未破裂脳動脈瘤悉皆(しっかい)調査」(UCAS Japan、2012年発表)によれば、直径が3~4ミリの未破裂脳動脈瘤の年間破裂率は0.36%で、大きくなるほど破裂率は上昇します。
もしも脳動脈瘤が発見され、医師に治療をすすめられた場合は、その理由をよく確かめる必要があります。納得がいかない場合はほかの医師にセカンドオピニオンを聞いてみるとよいでしょう。