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 昨年8月に青森県東北町立中学1年の男子生徒(当時12)がいじめを訴える遺書を残して自殺した問題で、学校側がいじめに関するアンケート結果を破棄していたことが分かった。多くのいじめ裁判を取材してきた不登校新聞編集長の石井志昂さんは、こうした裁判対策とも取れる"証拠隠滅"が「もはや常態化している」と指摘する。学校の行為は罪の問えないのか。

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 いじめ自殺があった学校で、自殺の3カ月前に行なわれた全校生徒へのアンケート結果を学校が破棄していたことがわかりました。自殺したのは青森県東北町の中学1年生男子生徒(当時12歳)です。

 破棄されたアンケート用紙には、男子生徒自身が「いじめがあります」に印をつけ、「からかわれる」などと記していたとされています。また、自殺する2か月前にも担任教諭との面談のなかで男子生徒は同級生からの嫌がらせを訴え、「いじめがなければもっと生きていたのに」との遺書を残して亡くなっています。

 こうしたことがあったなかで学校はアンケートを破棄しました。

 ある小学校教員は「こんな短期間で破棄するなんてありえない。通常の全校生徒アンケートですら、しばらくは保管する」と話しています。

 しかし、いじめ自殺で裁判になったケースにかぎってみても、アンケート結果や調査結果が破棄されたのは、この10年ほどで5回もありました(埼玉県北本市05年、千葉県館山市08年、北海道千歳市09年、滋賀県大津市11年/年数は自殺時)。もはや常態化しているとすら言えるでしょう。

 なぜ学校はアンケート結果などの「証拠」を捨てたのでしょうか。各学校の主張は下記のとおりです。

「保管義務規則は知らなかった」(館山市)
「情報がまとめ終わった」(千歳市)
「保管場所が確保できなかった」(北本市)

 置く場所がなかったなどという学校の都合で、いずれも遺族が「真実を知りたい」と訴えているなかで捨てられていたのです。

■なぜ学校は証拠を捨てることができるのか

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、中学2年生から不登校。フリースクールに通ったのち、NPO法人で、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材。現在はNPO法人を退社しジャーナリストとして活動中。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)。

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