一審の東京地裁は、これらの行為の一部を認定したものの「自殺の原因になるようないじめがあったとは認められない」と判断しました。
この判決を受け、女子生徒の友人は「結果にショックを受けて裁判に来ました。彼女はいじめられていました」と泣きながら話していました。同級生が涙したのは、当時、女子生徒を救えなかったこと、そして一審では裁判に出る勇気が持てなかったからです。「救えたはずなのにニ度も救えなかった」という思いからの涙でした。
しかし、結果は遺族の敗訴。同級生は自分の訴えを東京高裁は信用しなかったと、さらに傷ついたでしょう。
こうやって司法は「いじめられた子ども」を守る判断ではなく、「いじめ自殺の責任から逃れる学校」を守る判断を積み重ねてきました。
■教師にいじめ相談したら「ウソつくな」
アンケートの破棄など「事実の隠ぺい」と思われる行為で傷つくのは、なにも自殺や裁判にかぎったことではありません。
私が取材したケースでは、教師による事実隠ぺいを知って不登校になった例があります。
現在17歳の女の子が中学生だったのころの話です。三者面談で親が「うちの子はいじめられてないでしょうか」と担任に確認したところ、担任は「いじめはない」と言ったそうです。しかし、親は不審に思い、全校生徒のアンケート結果を見せてもらいました。親がアンケート結果を見ると、名指しで「いじめられている」と書かれていたそうです。
女の子はこれを知り、自分へのいじめ以上に、先生が目の前でウソをついていたことにショックを受け不登校になっています。
別の女子高生は「いじめを先生に相談したら『ウソをつくな』と言われて以来、取り合ってもらえなくなり不登校になった」と話してくれました。ある保護者からも「いじめを相談したとたん、担任とも連絡がとれなくなり、まったく調べてもしてくれない」という話を聞いています。
おそらく裁判で争われているケースは氷山の一角でしょう。