「ヘイ・ジョー」「パープル・ヘイズ」など3枚のシングルで人気と評価を確立したあと、最初のアルバム『アー・ユー・エクスペリエンスト』を発表したのが、67年5月。翌月、ポール・マッカートニーらの推薦を受けて参加することとなったモンタレイ・ポップ・フェスティヴァルでのあのパフォーマンスをきっかけに本国アメリカでもその存在を知られるようになったヘンドリックスは、フィルモアでのライヴも体験したあと、10月にロンドンのオリンピック・スタジオで録音に取り組み、『アクシス : ボールド・アズ・ラヴ』を仕上げている。渡英からわずか1年、劇的に状況が変化していくなか、24歳の青年は内に抱えていたアイディアやヴィジョンのすべてを、意欲的に、貪欲に、短期間のレコーディングで表現し尽くしたのだった。
ファースト・アルバム収録の「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」(太陽から3番目の石=地球)によっても示されていたことだが、ジミはサイエンス・フィクションに興味があり、実際、アーサー・C・クラークやフランク・ハーバート、カート・ヴォネガットらの本を熱心に読んでいたという。
アルバム『アクシス』は、彼のそういった側面を強く打ち出した「EXP」で幕を開ける。ラジオ局のアナウンサーとUFOや宇宙人の研究家とのあまり噛みあわない会話という設定の不思議なトラックだ。速回しから低速へとテープの回転が微妙に変化し、フィードバック音のよく練られたコラージュへと移っていく。アクシス=地軸の揺らぎを感じさせるような混沌としたイメージは、アルバムのタイトルやコンセプトを彼なりのスタイルで示したものだったのだろう。
そのフィードバック音が消えると、ミッチが叩く、乾いた感じのドラムスが聞こえてくる。「リトル・ウィング」などとともに巨匠ギル・エヴァンスの耳をジミに向けさせることとなった「アップ・フロム・ザ・スカイ」だ。アメリカのジャズ・ミュージシャンから多くのことを吸収したというミッチが大きな役割をはたしたこの曲を例に出すまでもなく、エクスペリエンスはあくまでも3人のグループであり、もともとギタリストだったノエルはジミとのユニゾンや速いパッセージでいい味を出している。