現に、前述した地銀協の調査では、民業圧迫が報告されたケースのうち、もっとも多かったのが日本公庫で、次が商工中金、さらには他省庁の政府系金融機関もそれに続いていた(11月17日付京都新聞)。
これらの機関が行っている融資の基本的仕組みは商工中金の危機対応融資と同じなので、同じことが起きる可能性は十分にあると考えるべきであろう。
ここで、非常に気になるのは、地銀協の調査が全面公開されない可能性があることだ。地銀協は金融庁の監督下にある。その金融庁は、財務省の事実上の植民地である。であれば、財務省の優良天下り先である日本公庫を責めるような材料を地銀協が公表できるのかという懸念がある。
現に、京都新聞の報道では、「調査結果は公表しない考え」と書いてあったが、その部分をあえて落として報道した新聞もあった。元は共同通信の配信記事だと思われるが、この部分について、地銀協が明確なコメントを出さなかったからかもしれない。
第3段階は、商工中金や他の政府系金融機関の完全民営化である。
そういうと、「危機対応融資は民間ではできない」「中小企業の切り捨てだ」という批判が起きるかもしれない。しかし、そんなことはない。現に、危機対応融資の実施機関には民間銀行も手を挙げられることになっている。ただ、実際には、そういうことが広がって政府系金融機関の民営化論が高まると困るので、手続きを煩雑にしたり、絶対に儲からないような仕組みにして、民間銀行がこれを手掛けないようにしている。
そこで、危機対応融資を実施すれば、十分な損失補填を政府が行うようにして、それでも二の足を踏むところが多ければ、さらに、条件を改善する。そうすれば、必ず、これらの業務を行う民間銀行が増えてくるはずだ。
民間銀行なら、商工中金などの政府系金融機関のように、役所の天下り先確保のための実績づくりが優先され、揚げ句の果てには大量の不正融資が横行するということはないはずだ。