その後、小泉政権が終わったころから、両省は天下りポスト復活を狙って、虎視眈々とその機会をうかがっていた。民主党政権では天下りポスト奪還はならなかったが、国民が気づかぬ間に民営化方針撤回に向けて大きな実績を上げた。

 その過程で官僚たちが利用したのが、リーマンショックや東日本大震災という大規模な外的ショックだった。経産省は、中小企業への公的金融支援の必要性が高まったとして、2度にわたって商工中金の完全民営化を先送りさせ、今や民営化が実施されるかどうかも極めて怪しい状況にまで持ってくるのに成功した(財務省も同じ手口で彼らの系列金融機関の民営化を先送りさせている)。国民にとっての大災難が彼らにとっては天からの贈られた幸運だったのである。 

 では、何故、役所がそこまで民営化に反対するのだろうか。

 それは、完全民営化されると、役所が人事に直接介入するのが難しくなり、天下りを好きなようにすることができなくなるからだ。だからこそ、民営化阻止は、役所にとっては至上命題なのである。

 ちなみに、商工中金の民営化が2度も先送りになった背景には、経産省だけでなく、自民党族議員の思惑もある。民営化されれば、族議員は、その融資について口利きがしにくくなる。逆に、政府機関として経産省の下にあれば、いろいろと圧力をかけたり便宜供与を受けたりということがしやすいのだ。

 民営化をほぼ止めることに成功した経産省は、第2次安倍政権になって商工中金の社長ポストを次官OBの天下り先として奪還することに成功した。安倍政権は、前に述べた四つの政府系金融機関のうち日本政策投資銀行以外の三つの政府系金融機関で、財務省や経産省の次官級OBの天下りを復活させたのだ。これは、安倍政権が両省の協力を得るために行った取引だったと考えられる。

■美しいストーリー演出のために使った禁じ手

 以上のような構造を理解すれば、何故今回のような不祥事が起きたかがわかる。

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