「人工血管置換術は長期成績も安定しており、最も確実性の高い治療法です。ステントグラフト内挿術が適応できない、心臓から出てすぐの上行大動脈については、この手術をおこないます」(同)

 胸部大動脈瘤では年齢、ステントグラフトに適した血管かどうか、手術リスク、患者の希望などさまざまな点を考えて、個々の患者ごとに適応を決めていきます。

 近年、腹部大動脈瘤については、ステントグラフト内挿術を適応する場合も多くなっています。また、外科手術が負担となる80歳を超えた高齢の患者の場合には、ステントグラフト内挿術はよい適応です。

 一方、大動脈解離で緊急の外科手術が選択されるのは緊急症例のうち、心臓側の上行大動脈側に裂けるA型解離です。24時間以内に手術しないと48時間後には5割が死亡します。7日以内には70%、14日以内には80%が亡くなるという東京都の統計があります。

「A型解離では、死因の90%以上を占める心タンポナーデを防げるかどうかが重要です。胸部大動脈解離に対する緊急手術は人工心肺を用いた手術になります」(同)

 緊急手術症例以外では、治療方針は各病院や患者さんの状態によって違いがあります。主治医の説明を詳しく聞き、場合によってはセカンドオピニオンを聞くことも必要です。

「外科手術とステントグラフト内挿術の両方の治療に対する経験が豊富で、治療の適応に関して外科と内科が話し合って慎重に決めている病院で治療を受けるのが望ましいと思います」

 と、安達医師は勧めます。

(取材・文/伊波達也)

取材協力

公益社団法人地域医療振興協会 顧問
練馬光が丘病院 循環器センター長
安達秀雄(あだちひでお)医師