「それいけ!アンパンマン」のドキンちゃん、「ドラゴンボール」のブルマをはじめ、「ペリーヌ物語」のペリーヌ、「きまぐれオレンジ☆ロード」の鮎川まどかなどで知られる声優の鶴ひろみさんが16日夜、首都高速道路上に停車中の乗用車内で意識不明の状態で見つかり、同日、搬送先の病院で死亡が確認された。所属事務所によると、死因は運転中の大動脈解離。57歳だった。弾力性がなくなりもろくなった大動脈に瘤(こぶ)ができて破裂したり、血管の壁が内側で剥離した状態になる。緊急に治療しないと命に関わるのが大動脈疾患だ。週刊朝日ムック「脳卒中と心臓病のいい病院」から、その予防や治療などを解説する。
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■大動脈に瘤ができる病気と大動脈が解離する病気
「心臓から全身に血液を送る重要な役割を果たしている大動脈は直径2~3センチと人間のからだの中で最も太い血管です。その大動脈に瘤ができるのが大動脈瘤(りゅう)、血管の壁に内側から裂け目ができてしまう病気が大動脈解離です。もろくなった血管に前触れもなく発症し、突然死を起こしやすい恐ろしい病気です」
地域医療振興協会顧問で、練馬光が丘病院循環器センター長の安達秀雄医師はそう説明します。
大動脈は、心臓を出るといったん上へ行き、背中側へ逆U字形に曲がりますが、この周辺に大動脈瘤は一番多く発症します。血流の圧力を受けやすいためです。
大動脈瘤が破裂すると、堤防が決壊したように大量の血液が血管の外に流れ出します。そのため手術ができても死亡率は16.8%、手術ができなかった場合も含めると死亡率は35・6%という統計もあり、破裂する前に治療することが重要なのです。
通常、瘤が破裂する確率は、5センチ以下では年間5%未満ですが、5~6センチでは7%。7センチ以上では19%と危険度が高まります。5~6センチを超えたら治療をするべきです。
大動脈瘤は、横隔膜の上までの胸部と、その下の腹部に分けられ、瘤の形やでき方によって、真性、仮性、解離性(大動脈解離が経過して瘤を形成する)の三つのタイプに分けられます。